つなの意見。

書評や映画やドラマの感想、乃木坂についてを綴ります

『錦繍』 宮本輝 手紙の趣き

 秋があっという間に過ぎていってしまったような気がします。最近は朝と夜が寒いので起きるのにも寝るにも辛いものがあります笑

もうすぐ立冬なので更に寒くなると思います。体調管理に気をつけたいです。

 

 今回読んだのは宮本輝の『錦繍』です。

写真の本にはカバーがありませんが、家の両親の本棚にあった本なのでカバーはどこにあるか分かりません…笑

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https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/130702/

 

〈あらすじ〉

 星島亜紀(勝沼亜紀)はかつて夫であった有馬靖明に手紙を送る。それは蔵王で再会したことがきっかけだった。2人はある事件により、別れたのだった。2人は手紙を交わしながらその中でそれぞれの胸中を吐露していくのであった。

 

〈感想〉(※ネタバレ含む)

 書簡体の小説は太宰治の「葉桜と魔笛」以外多分読んだことがないのですが好きな文体だと思いました。また、手紙というのはその交わし合う人達しか普通読まないものなので作者としても書きやすいのかな、と思いました。想いや考えも伝わりやすかったと思います。

 

 亜紀も有馬も別れてから救われていない感じがしました。純文学ってそういうものが多い気がしますが… 亜紀は別れてから結婚して子供にも恵まれますが、その子供は知恵おくれの子供で、結婚しても浮気されていました。有馬は堕ちるところまで堕ちていました。どちらかというと、亜紀の方が不幸だと思いました。有馬の浮気から2人の人生が狂ったのに、皮肉なものですね。

 

 有馬に関しては面倒な女性(?)ともいえる令子に出会っていますが、ヒモのようになっていました。有馬がなりたくてなった訳ではないと思いましたが、自分がやりたくもない仕事をやらされたり、借金取りに見つかっていたり散々ではありました。

有馬が亜紀に宛てた手紙の中で許せなかったのが「男は浮気するが、それは本能で身勝手だと思うかもしれないがしょうがない」と言っていたことです。確かにそうかもしれませんが身勝手と認めておきながら自分からそう言うのはお門違いだと思います。亜紀もそれに対して納得している(というか手紙の中で特に触れていない)ようだったので、どうなんだろうと思いました。

 

 亜紀は有馬にも勝沼にも浮気されていました。女としての自信を失うのも無理はありません。有馬が亜紀に宛てた手紙の中ではそんなことはないと言っていたのでやはり亜紀のことが有馬は愛していたのだと思います。あきもそれに対し満更でもない感じなので2人は確かに愛し合っていたのだと思います。しかし、これは手紙なので全てが真実とは限らないと思いました。とても2人が嘘をついているようにはこの本を読んでいる限り思えませんでしたが。

 

 これから2人がまた夫婦になることはないと思いますが、2人が良い人生を送っていけるといいなと思いました。また、そう思える作品でした。

また、今はSNSなどの普及により手紙を送り合うことはあまりないのでこの書簡体というのは趣きがあって良いと思いました。

 

 

 結婚したことがないので夫婦についてはよく分かりませんが結婚は難しいものだとつくづく思います。宮本輝がこのような作品を書くイメージはなかったので意外でした。

ぜひ読んでみて下さい。