『五番町夕霧楼』 水上 勉 主人公不在
今日は割と暖かい方の日だったかなと思います。ダッフルコートを着て学校に行ったら暑かったです笑
今回読んだのは水上勉の『五番町夕霧楼』でした。
https://www.amazon.co.jp/五番町夕霧楼-新潮文庫-水上-勉/dp/4101141010
〈あらすじ〉
一家の経済難により、京の遊郭「夕霧」で働く夕子。西陣の織元の大旦那、甚造に水揚げされるだけでなく、故郷が同じ学生の櫟田と恋に落ちるが、やがて病に蝕まれていく。
女の儚いいのちを描いた、心に迫る珠玉の作品。
〈感想〉(※ネタバレ含む)
この作品の時代設定がはっきりしなかったのですが、明治くらいでしょうか。
夕子などが働いている店は今でいえばキャバクラ的な所だったのだろうと思います。江戸時代の遊郭に1番近いのではないかと思います。今も昔もお金が無いとやはり娘などをそういった所で働かせたりするのは変わらないのだなと少し悲しくなりました。
邦画で安達祐実主演の『花魁道中』という作品があるのですが、その主人公は折檻(火のついたキセルを胸などに押し当てる)を母にされていたことにより体温が上がると、その折檻をされた所が花のように赤くなっていました。夕子は例外というか体質でそうなのかもしれないし、彼女と寝ていたのは甚造だけだったので彼だけにそう見えたのかもしれません。櫟田と寝たのかは定かではありませんが、どうだったのでしょう。
夕子が甚造と櫟田以外の客を取っていたかはわかりませんが、そもそもこの2人の客だけで夕子が生計を立てていたのが不思議です。ほかの客も取った方が儲かると思います。
夕子の心情などが描かれていないので、主人公がはっきりしない、不在といってもいい作品だと思います。
櫟田が寺を燃やした動機もよく分からず、夕子におかしな薬を盛っていたので心中を図ろうとしていたのかと少し思っています。そして、それに失敗したから寺を燃やし、「寺と心中したかった」などと言ったのだと思いました。
純文学に近いものでした。終わり方もすっきりしないというか、救いもなかったのでモヤモヤしています笑
是非読んでみて下さい。