つなの意見。

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『妖櫻忌』 篠田節子 古典文学のオマージュ

 今日は比較的暖かい日でした。夕方の今でもそれほど寒いと思いませんでした。それにしても最近本当に乾燥が気になります。きちんとケアしたいです。

 

今回読んだのは篠田節子の『妖櫻忌』でした。

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https://www.kadokawa.co.jp/product/200312000235/

 

〈あらすじ〉

 不可解な死を遂げた女流作家、大原鳳月。その死を悼む編集者たちのもとに彼女をモデルにした原稿を大原の秘書だった律子が送ってくる。しかしそれはだんだんと奇妙なものを感じさせてくるのだった。

 

〈感想〉(※ネタバレ含む)

 大原鳳月という人物が若手の演出家と心中のような形で死んでしまったというセンセーショナルな事件がその秘書、関わったことのある編集者にこれだけの惨事を起こさせるなど、本を読み始めた時は予想だにしませんでした。

 

 大原鳳月という人物が最後まで謎だったのが惜しいところかと思います。結局大原鳳月は男をたぶらかすようなことができ、それが死んでも尚律子に生き続けていたのかよく分かりませんでした。しかも年老いてもそういった魅力があるのは違和感がありました。実際私はそんな人を見た事はないので…顕子がいわゆる性的な魅力が鳳月にあるとは語っていなかったので、どうなのか微妙なところです。男の人だけ感じるのかもしれませんし、単に鳳月が男性を夢中にさせるのが上手いのかもしれません。

 

 六条御息所が所々に出てきていたところから、鳳月の執念は六条がモデルとなっているのではないかと少し思いました。物の怪のように律子に取り憑いた訳ではありませんでしたがそのように感じました。

 

 律子が鳳月を計画的に殺したとは思っていなかったのでその部分に関してはびっくりしました。ただ、師に対して恨みを持って殺す話は結構ありがちだと思うのでそこはもう少し意外性が欲しかった気もします。

 

 六条御息所孝謙天皇が出てきましたが結構知識のある方ではないと分からないと思うのでもっと色々な方に読んでもらうにはもう少し分かりやすいたとえを出しても良かったのではないかと思います。

 

 また性的な直接表現のようなものがなかったのでそこは日本の古典文学の趣き的なものを感じて良かったです。

 

 

 ものすごく怖いホラー小説ではありませんでしたが、気のせいなのか本当に霊的なものがいるのか分からないのがリアリティがあって良かったです。

是非読んでみて下さい。