『鳩の栖』 長野まゆみ 美しい文章、趣。
今回読んだのは長野まゆみの『鳩の栖』でした。長野まゆみさんは私の最も好きな作家さんと言っても過言ではありません。
本の中にはご本人が描かれた絵がありました!長野さんの作品同様、美しい絵ですね〜
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784087471243
〈あらすじ〉
転校したばかりで友達のいない操は至剛という同級生に声をかけられる。しかしその後学校であまり姿を見なくなる。実は彼は死を間近にした病に罹っていた…。
長野まゆみの珠玉の短編五編。
〈感想〉(※ネタバレ含む)
「鳩の栖」
美しくも儚いお話でした。操という名前も至剛、至大という名前もとても良い名前ですね。操という名前は元々良いなと思っていた名前なのですが、子供ができて男の子ならその名前をつけたいと思います。鳩の掛軸や出てきたり水琴窟など、珍しいなと思いました。昔は珍しくなかったのしれませんが、その珍しさもよりこの作品の趣を際立たせていると思いました。最後至剛が死んでしまうのは本当に悲しかったです。転校したばかりで心細い自分に話しかけてくれた友達が突然死んでしまうなんてとても悲しいことです。切なかったです。
「夏緑陰」
ヨーグルトって、私も好きなのですが確かに不思議な味がしますよね。寧は割と複雑な家庭で育っているようでしたね。しかも偶然(多分そう見せかけたと思いますが)体調が悪いところを助けてくれたのが彼の実の兄だったというのも印象的でした。
寧が母を待っている途中で出会った女の人が鏡を持っていて、その鏡が自分の母が持っている鏡と同じものだったというのも不思議でした。
兄と寧が出会うことができて良かったと思いました。
「栗樹(カスタネア)」
長野まゆみさんは兄に憧れている弟という描写が好きなのかなと思いました。自分をからかってくる従兄弟の端を少し鬱陶しく思っている乙彦は兄の甲彦の前では無防備な姿(泣いているところ)を見せたりするのにやきもきします。血縁上では甲彦は兄で、甲、乙、丙と来ているので丙彦と名付けられるところだったと端が言っているのが面白かったです。栗の実と橡の実に関して論争(?)をして喧嘩のようになってしまった2人でしたが仲直りはしていましたし、端が居候をするために発ってしまうというのを乙彦が嫌がっていたのはやはり2人は仲が良いのだと微笑ましくなりました。
「紺碧」 「紺一点」
続いているお話なので一緒に感想を書きます。この話も兄に憧れる弟のお話でした。真木という同級生は主人公亨の来島への思いに気づき、それをからかっている感じでした。真木は変わり者なのか、整っている顔をわざと隠すような風体をしています。はっきりとした理由は分かりませんでしたが、面倒くさい女の子なんかに言い寄られるのが嫌だからかと思いました。でもそれ以外にも理由はありそうです。私は真木が亨のことを恋愛対象として好きだと思ったのでそれが関係しているのかと思いました。亨も義兄である来島のことを恋愛対象として好きだと思いました。特に亨は叶うことの無い恋をしていますが、真木といい感じなので幸せになって欲しいです笑
長野まゆみさんの本はとても文章が美しいです。幻想的な世界観もとても素敵です。
是非読んでみて下さい!