つなの意見。

書評や映画やドラマの感想、乃木坂についてを綴ります

『卒業』 重松清 死との向き合い

 今回読んだのは重松清の『卒業』です。f:id:mtsunatyanjp:20181124235510j:image

https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/134919/

〈内容〉

 「卒業」をテーマにした重松清の四編を集めた作品。

 

〈感想〉(ネタバレ含む)

「まゆみのマーチ」

 この作品は「卒業」というのがタイトルですが、これは母からの卒業という話だったのだろうか。

 就職して、エリートといえる人生を歩んでいた幸司、そして、自由気ままに生きるその妹のまゆみ。まゆみは小学生の頃、歌うことが好きでした。しかしあまりに歌うことが好きで、授業中でも歌ってしまう。まゆみの担任は、マスクを付けさせることで歌うことをやめさせた。しかし学校にいる間マスクを付けていると顔の周りに発疹ができてしまうのだった。ある日発疹が家に帰っても消えず、学校にいくことができなくなってしまう。

 

まゆみと重なる登場人物は、幸司の息子である亮介だ。亮介は、優秀な学校の受験に合格したが次第に学校に行けなくなってしまう。理由としては、その学校の勉強についていけなくなってしまったからだった。受験勉強で頑張りすぎてしまったのだ。所謂「燃え尽き症候群」である。

 

 まゆみが小学校に行けなくなってしまって、母は「まゆみのマーチ」を歌いながら学校までの道を歩くことで学校に行かせようとした。そして、まゆみは小学校に行けるようになった。

 

 「まゆみのマーチ」のメロディーというか歌自体をまゆみは幸司に教えないと言っていた。しかし結局教えていたので何なんだと思ってしまった。しかし、まゆみと同じような状態になってしまっている亮介を元気づけるために、「まゆみのマーチ」ならぬ「亮介のマーチ」を幸司に歌ってあげて欲しかったのかもしれない。結局歌ってはいなかったが、幸司は亮介を学校までおんぶして連れていこうとしていた。この作品は幸司の母の娘に対する愛情、また思いやりに溢れている作品だと思った。

 

仰げば尊し

 この作品のテーマは「死」だった。小学校の教師をしている光一の父は病に蝕まれていた。もう老い先も短いと思われているので、自宅療養に至った。そんな光一の担任するクラスで死に異常なまでに興味を持つ田上康弘という少年がいた。彼はインターネットの死体サイトを学校で見たり、斎場で遊んでいたりと何かと問題児だった。

 康弘に対してどのように教育するのか、また「死」に興味を持つことがどうして悪いのかと光一も分からずじまいだった。

 そして、「命の大切さ」を教える課外授業として自分の父の介護の手伝いをさせることを考えた光一。康弘だけでなく他の生徒も初めは喜んで参加したが死に近づいている人を見ることはショックが大きいようだった。参加者はとうとう康弘だけになった。その授業について苦情の手紙が届いた。その苦情の手紙を書いた家庭では生徒がショックで夕食に手をつけられなかったという。教頭にも咎められ、授業は中止となった。しかし康弘だけはそれを残念がった。康弘は人の死にただ興味を持っているだけでなく、真剣に介護してくれているように感じた。そのため、康弘をもう一度家に招くことにした。しかし康弘はそこで父のその姿を写真に収めようとしていた。光一は何故そんなことをしたかは分からず、ただ悲しく、許せなかった。

 康弘はその次の日に直接謝りにきて、また行きたいと言ったが光一はそれを拒んだ。ネットに載せたりするために写真を撮ったわけではないという。

 しばらくして家のポストにルーズリーフで謝罪を訴える手紙があった。光一より妻の麻里に写真を撮ろうとしたことを話すと、もう二度と招くなと言われる。

 

 死と言うのは光一の言う通りで、本当に死んでみないとわからないと思った。私は死ぬことは消えることでも無くなることでもなく、人の心に残ることだと思う。

 

「卒業」

 中学生頃の女の子は誰しも自殺願望や自殺未遂などカッコつけたくなるものだという考えは少し違うと思った。また、親が自殺したからそれが子供に伝染しているという話が違和感があった。亜弥がたまたま学校でいじめられていて死ぬ動機があっただけだと思う。

 

 伊藤は悪く言ってしまえば勝手に死んでいった人なので妻がいながらなんで支えてやれなかったのかと矛先が妻に向くのは非常に息苦しかった。

 

 もし自分の親が自殺で死んでいたらやっぱり意識してしまうのだろう。そもそも親が隠した方がいいのではないかと思うが、物の分別がついている年齢だと思われてその事実を知ってしまったのかもしれない。

 

「追悼」

 死んでしまった母を忘れることができず、再婚して新しい母となった人を「お母ちゃん」と呼べずにいる敬一。私も再婚して変わった母を素直に母と思えないと思う。

 敬一は作家をしていて母についてのエッセイを頼まれるが、実際にあった出来事とは違う記事を書く。

 母が死ぬ間際まで書いた闘病記のような日記は敬一の宝物だったが、父により新しい母であるハルさんにその日記のことを知られ、「お母さん」と呼べば返すと取り上げられてしまう。

 

 ハルさんと確執があった敬一であったが、結局関係性が良くなっていて良かったと思った。

 

 

 感想というかあらすじになってしまいました…最後の方雑でしたね…

是非読んでみて下さい!