つなの意見。

書評や映画やドラマの感想、乃木坂についてを綴ります

『武道館』朝井リョウ 女性アイドルのリアル

 今回は高校生くらいに読んだ朝井リョウの『武道館』の感想と、恋愛禁止のグループで恋愛をしてしまうアイドルについての意見を述べようと思います。書評とカテゴリにありますがそんなちゃんとしたものではないです。過去に読んだ本ではありますが内容が結構頭に残っていて書評を書きやすいかと思って選びました。


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https://www.amazon.co.jp/%E6%AD%A6%E9%81%93%E9%A4%A8-%E6%9C%9D%E4%BA%95-%E3%83%AA%E3%83%A7%E3%82%A6/dp/4163902473

 

 こちらの本はドラマにもなっていました。ハロプロのJuice=Juiceが作中のアイドルグループを演じています。

ドラマの公式サイトです↓

https://www.fujitv.co.jp/b_hp/budokan/index.html

私は女性アイドルが好きになる傾向があるのですが、ハロプロにも一時期ハマっていました。丁度ハマっていた頃で、私が読んだすぐ後くらいにドラマを実写化するとなって少しだけ見ていました。Juice=Juiceを最近久しぶりに見たらみんな綺麗になっててびっくりしました笑

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〈参照〉https://ddnavi.com/news/282229/a/

作者の朝井リョウさんもハロプロが好きなそうです。実写化する時もアイドル役はどのグループでもいいからハロプロで!とお願いしたそうです。

因みに愛子の幼なじみ、大地を吉沢亮さんが演じています。今大人気の俳優さんですが、個人的に大地よりはイケメン過ぎるなぁと思いました。

 

 それでは書評に入っていきたいと思います。一応書評なのでである調にしたいと思います。

 

〈あらすじ〉

日高愛子、堂垣内碧、坂本波奈、安達真由、鶴井るりかからなる「NEXTYOU」というアイドルグループが武道館ライブを目標に活動し、人気になっていく。その中で彼女たちの葛藤、年頃特有の悩み、恋愛、またCDの商法など様々な問題が生まれる。アイドル戦国時代と呼ばれる今、リアリティのある作品になっている。

 

 〈感想〉※ネタバレあり

 

 主人公は日高愛子である。物語はメンバーである尾見谷杏佳が卒業するところから始まる。杏佳は碧とダブルセンターをつとめていたメンバーだった。武道館ライブを目指すという目標はそもそも彼女がライブで宣言したことであった。このため、NEXTYOUは5人グループとなった。

 

 感想としては、まずこの作品はかなりリアルに描かれているのではないかと思った。例えば、愛子たちが水着でグラビアの撮影をするシーン。

(以下本文引用)

 

 向かいの撮影スペースでは、真由が、胸を強調するようなポーズを取っている。愛子は、それを見なくてもいいように、自分に向けられているカメラのレンズの中心を、ぐうっと見つめた。

《中略》

シャッターを切る音がする。愛子は心の中で歌いはじめる。

雨の日、傘を、わすれた君が、スニーカー、片手に、待ちぼうけしてた、昨日、買った、青色の傘、サイズ、ひとつ、小さくて、君の、となり、ひとりじめ。

「これがほんとに最後、思い切りカメラの向こうのファンを見つめて」

周りの大人が言っていることがわからなくなったとき、愛子はこうして、心の中でデビュー曲を口ずさむ。

 

このように朝井リョウはアイドルというか、年頃の女の子の心情を実にうまく表現している。NEXTYOUは1番年下のるりかが14歳で最年長の波奈は留年しているので19歳だ。引用した文では愛子が性的な目で見られることが嫌だというのがよく伝わってくる。愛子以外のメンバーももしかしたらそう思っているかもしれない。

「入口は何だっていい」

愛子たちのマネージャーはこう言っている。もちろん、アイドルとしてのパフォーマンスの良さなどが認められることは素晴らしいことだ。入口を狭めるべきではないと。極端に言えば水着でグラビアをすれば(しないと売れない)売れるかもしれないと言いたいのだろう。本人たちが望んでアイドルという仕事をやっているにせよ、水着を着て写真を撮られることだけが仕事ではないと私は思う。

 

 真由はダンスレッスンの際、先生に「変なダイエットをしている」と指摘される。確かに真由は成長期でふっくらしてきた体を気にして茎わかめの梅味ばかり食べていた。上記のグラビアを撮った際、真由1人だけ上下つながった水着のデザインで体がふっくらしていることがネットで中傷されてしまう。

近年、ネットでもアイドルや女優がフェイスラインが丸くなってきていることなどが指摘され記事にされてしまうことがある。こういった部分もとてもリアリティがあった。

また、波奈がアニメ好きアイドルとしてテレビに出演し、彼女の一人暮らしの部屋を撮影した動画の中で違法アップロードされているアニメを見ていたことで炎上してしまう。

実際、アイドルがあげた自撮りに写っているアクセサリーが高価なもので話題になったり、アイドルのプライベートの写真が流出したことでそのアイドルの通っている学校が分かってしまうことがある。

作中でも所謂「解析班」(ネット情報を分析することに長けているファン)を避けるためダミーの制服が用意されていたりする。実際にそのような例があるのかは不明だがネットやSNSがもてはやされている今、ありえることかもしれない。

高価なものを身につけていることがなぜ話題になるだろうか。中傷している人々はファンだけではないかもしれないが自分より恵まれた生活をしていることが気に食わないのかもしれない。

 

 NEXTYOUはCDの売上げを伸ばすため、握手会(NEXTYOUでは「席替え」という)での接触時間が2倍になる券を特典としてつけている。これもネット記事に「コンセプトキャバクラ券」と揶揄されてしまう。

CD不況と言われている今、特典やジャケットのデザインを変えるなどとして売っているアイドルやアーティストが多いだろう。

特にアイドルは握手会というイベントがあることでそのアイドルのCDを大量に買っている人々がいる。その買ったCDが捨てられている画像がSNSで拡散されたことがあった。

 

また、この作品にも登場するが握手会でアイドルやその周りにいた人々が刺されることやアイドルに暴言を吐く人がいることも現実だ。

握手会はアイドルとの接触が魅力のイベントだがその分危険だと思う。何か対策が必要なのかもしれない。

 

るりかは、太い(愛情のサイズが大きい)ファンが多くそのアイドル像を学校でも貫いている。男子と話をすることさえ一切しない。しかしそのせいで男子からはもちろん、女子からも避けられてしまっているという。ストイックではあるが、果たしてそれで彼女は幸せなのだろうかと思った。

恋愛禁止のアイドルの熱愛が週刊誌に掲載されることはあるが、恋愛禁止ということが決められているとはいえ年頃の女の子には恋愛を断つというのは難しいのかもしれない。だからといってここまでストイックなのもいかがなものかと思う。

アイドルの恋愛についてもこの作品は触れている。愛子は幼なじみに水嶋大地という同い年で高校も同じ少年がいる。幼なじみということでメールで自分のアイドル活動の情報を伝えたり、やり取りをするほど仲が良い。

 NEXTYOUは次第に人気になり、波奈が卒業を発表する。その卒業公演が武道館が開催されることとなった。そして2期候補生を応募し、彼女たちがダンスやレッスンを受けた結果で2期生が決まることになった。

しかし2期候補生である上田梨夏子のInstagramで男性との親しげな写真が流出する。これにより上田梨夏子は候補生の辞退をする。

その後、レッスンを体調不良で休んでいたはずの碧が名古屋に1人でいたことが一般人のSNSで事務所にバレてしまう。碧は一人でブラブラしていたと言う。

愛子は大地が試合に出るというので碧を誘って観に行く。愛子は試合を観て大地を触りたいと思っている自分に気づく。

愛子は自分の誕生日であり、ライブでもある8月31日に大地と父をライブに誘う。しかし父は仕事で間に合うことが出来なかった。愛子と大地はマンションが同じなので、よくお互いの家に行くことがあった。愛子のプレゼントを渡しに愛子の家に来る大地。愛子は大地と結ばれる。

碧が名古屋に行っていたのは碧が以前ヘアメイクをしてもらった男性に会いに行くためだった。

愛子が試合に碧と行った写真、大地の家に入っていく写真がある週刊誌に載った。葵の写真も乗った。2人は脱退を決意し、武道館に立つことは無かった。

愛子は「歌が好きなこと、ダンスが好きなこと、可愛い衣装を着るのが好きな事も小さい頃から変わらない。大地を好きな事だけがある時から急にダメになった」と言う。

個人的にこの部分がとても印象に残った。

アイドルの熱愛が報道されることは同じグループのメンバーにとってもファンにとっても悲しいことだと思う。正直、報道やリークをされていないだけで彼氏がいるアイドルやそれが公認されているアイドルもいる。

アイドルは人に夢を見させる職業とよく言われる。恋愛禁止というのはそこから生まれたルールだと思う。

愛子はNEXTYOUが悪く言われる度にその人の頭の中の自分がどんなものなのか思い浮かべたという。アイドルにお金を注いでいるファン以上に幸せになってはいけない。余計なことは考えずに歌って踊っていればいい。

それは愛子が憧れていたものとは違った。愛子が大地を好きなことは本当の事だと思うが、愛子が大地と会ったりしていたことはそのアイドル像から目を背けたかったからかもしれない。

恋愛禁止というのは私が中学高校の頃から流行っていたアイドルに強いられたルールだった。私が女性ということもあるが私は自分の好きなアイドルに熱愛報道があってもそこまでショックではない。むしろアイドルのプライベートの問題だと思う。ただ、恋愛禁止のルールがあった場合は他のメンバーが守っているのに、とも思う。

アイドルに清らかなイメージを求めることは発想が古いのではないかと思う。しかし、ファンの夢を壊さないためには必要なルールなのだとも思う。

女性アイドルというのは地下アイドルも含めるとかなり存在するそうだ。アイドルの恋愛とはファンにとってもアイドルにとってもデリケートで難しい問題なのだと思った。

 

 本の感想を初めてブログに書いてみて結構難しいなと思いました!時間もかかりましたが、また他の本でもやってみたいです。朝井リョウの『武道館』、是非読んでみてください。