『むかしのはなし』 三浦しをん 世界が終わる時
なんだか気温差の激しい日々が続いていますね。温度調節や体調管理に気をつけたいです。また、昨日から11月に入って改めて驚いています。早いですね〜!
今回読んだのは三浦しをんさんの『むかしのはなし』でした。
https://www.gentosha.co.jp/book/b3730.html
〈あらすじ〉
もし、3ヶ月後に地球に隕石がぶつかるとなったらどうするのだろうか。日本の昔話を元にした短編集。
〈感想〉(※ネタバレ含む)
「ラブレス」
かぐや姫を元にしたお話でした。かぐや姫という題材だけで、ここまで発想が広がるのが素直にすごいと思いました。メールを送っている相手は誰か分かりませんが恐らく私は阿部かな、と思いました。月へ帰ってしまうかぐや姫とこれから死ぬ(殺される)ホストがリンクしているのが面白かったです。
「ロケットの思い出」
断片的に花咲かじいさんの話を取り入れていてその取り入れ方が上手いなと思いました。ロケットと言う犬に顔の似た男とその恋人の部屋へ空き巣に入るというストーリーは非常に面白かったです。手紙を書いている体で話が進んでいましたが誰へ向けた手紙なのか気になりました。
「ディスタンス」
自分の好きな人が血縁関係にあったことがないのでもし好きになったらこのような感じなのでしょうか。「天女の羽衣」は一年に一度、七夕の日だけしか会えないというお話でした。鉄八が本当に「あたし」を好きなら「あたし」はまた彼に会うことができると思います。それにしても、すごく切ないお話でした。
「入江は緑」
主人公の「ぼく」の手記のような形で物事が進んでいっていて、3ヶ月後に地球に隕石が衝突するかもしれないという話でした。「修ちゃん」が浦島太郎でしょうか。地球に隕石が衝突するかもしれないのにそれにあたふたしている人物が誰もいなかったのが良いなと思いました。自分がもしその立場だったらどうするか考えてみましたが初めて聞いた時はもっと驚くと思いました。
「たどりつくまで」
すごく不思議なお話でした。「鉢かづき」のお話とは少し違っていたと思いますが、前回のお話と繋がっていてそれを途中で気づいたので少しびっくりしました。整形をしたタクシーの乗客はどこまでも謎でした。主人公も実は女装(?)をしていたということも驚きました。主人公も何故そのようにしているのか謎でした。
「花」
自分が「死ね」と思ってしまう人と結婚できるようなものなのでしょうか。主人公は半ば強引に結婚してしまったようですが。「猿婿入り」という昔話は知らなかったのでここで初めて知りました。無償の愛と言えるほどに自分を愛してくれる人がいるのは少しいいなと思いました笑 でもやっぱり自分がタイプ(?)じゃない人と結婚するのは耐え難いものがありそうです。何だかんだ主人公は幸せそうでしたが。
「懐かしき川べりの町の物語せよ」
この短編集の中で1番長いお話でした。「桃太郎」を元にしたお話で、モモちゃんとその恋人、仲の良い(?)有馬、そして主人公の僕は、桃太郎のおともがモデルになっていました。鳥子の願いによって彼女の父の愛人の家に盗みに行ったダイヤモンドのネックレスは「桃太郎」の中の宝物を表しているのだと思いました。この話も前回の話とつながっていて結局、生き延びたいがために「僕」はロケットのチケットを自分のものにしてしまいます。しかし、彼が自分の声をディスクに吹き込んでいたのは未練からかと思いました。
人が所謂「世界の終わり」に立ち向かう時にどうするのか、色んな例があると思いますが様々なことをしている人がいてそれを客観的に見れて面白かったです。
日本の昔話を思ったより知らなかったので知ったうえで読んだらより面白かったと思いました。濃い短編集でした!
ぜひ読んでみてください。