『谷崎潤一郎犯罪小説集』谷崎潤一郎
いきなり本題に入ります。
今回読んだのは『谷崎潤一郎犯罪小説集』でした。
〈感想〉(※ネタバレ含む)
「柳湯の事件」
狂気に溢れている作品でした。青年は結局頭のおかしい人だったようですが、そういう人は自分がおかしいとかそういった自覚があるのか気になりました。頭のおかしい人のことは分かりかねますが、なぜ男を殺してしまったのでしょうか。瑠璃子に殺されると思っていたから、男を瑠璃子だと錯覚した青年は彼女に殺される前に殺そうと思ったのでしょうか。そもそも瑠璃子は女性なので男湯に死体でも入れることは難しいと思いますが…
青年が出所するまでに普通の人になれるといいですね。
「途上」
探偵の安藤と会った直後から話し始めていた話で犯人が誰かは分かってしまっていたのでそれが少し残念なところでした。最初に犯人が分かってしまうパターンの小説はあまり読んだことがなかったので面白いと思いました。しかし、安藤が最後笑っていたシーンでは狂気を感じました。事務所に本当に先の妻の父がいるのかどうか疑ってしまいます。
「私」
会話文が多く、読んでいて楽しい作品でした。私も中学、高校と寄宿舎で生活していたのでその頃を思い出しました。寄宿舎で盗みがあったこともありました。というか、そういったあまりプライバシーのない環境にいたら盗みは起こることだと思います。 同じ部屋に何人もいるわけですから。だからといって盗みをすることや自己管理ができないのは困りますが。私の寄宿舎も8人くらいで同部屋でした。しかし、貴重品は持ち歩いたりお金だったら銀行に預ける必要があると思います。そもそも同じ部屋の人のお金を盗もうなんていう発想がおかしいのですが。犯人は結局主人公だったということで語り手が主人公なので初めは流石に(?)犯人だということは言っていませんでしたが如何にもそうではないというような発言をしていたのでそこもまた文中で魅せる効果として良いと思いました。
「白昼鬼後」
最後まで何がどうなっているのかわからない、そんな作品でした。正直犯行現場を見ている時点で共犯じゃないのかなと思いました。結局纓子は罪に問われないのでしょうか。この作品は犯罪小説集ですが、谷崎のこういった話の人達は皆狂っているような描写で描くのかと疑問に思いました。
結構ニッチな作品でした。マゾヒズム小説集もあるそうです。ちょっと気になりますね。ぜひ読んでみて下さい。